歯にこびりついた歯石を放置していると、歯周病につながり、歯周病菌は全身にも影響をもたらし、病気になる原因を作るのです。
歯周病にかかったら、早急に適切な治療しなくてはなりません。
長生きの秘訣のひとつに口腔内を健康に保ち、歯が抜け落ちてしまう前にケアすることが重要です。
- 犬の歯石を放置するとどうなるの
- 歯周病で細菌が体内に入ると大変なことに
- 犬の歯石を除去する方法
今回は、歯石の放置で犬のカラダに何が起こるのか、また歯石を除去するよう方法をご紹介します。
犬の歯石を放置するとどうなるの?
愛犬の口腔内のケアをしていますか?本来「まっ白な歯」と「ピンク色の歯茎」が健康な状態です。
そして、大事なことがもうひとつ「息がくさくないか」チェックしてみてください。
歯に黄ばみや茶色の汚れが付着している、歯茎の色が悪い、口臭がする、これらの中で1つでも当てはまると「歯周病」になってる恐れがあります。
まず、歯石とは何かを説明していきます。
◆歯石
いきなり歯に歯石が付着するのではなく、元々は歯垢(しこう)から歯石に変化したものです。
唾液の中にあるミネラルと歯垢が反応して、硬くかたまったものが「歯石」と呼ばれるものになります。
歯垢から歯石に変わるまでに、そのスピードは驚くことに最短で3日~5日で、石灰化することです。
歯石は固まると頑固で歯みがきでは取れない
歯の表面がザラザラで、でこぼこしていたら歯石に間違いないです。触ってみると確認しやすいですよ。
歯垢の段階であれば歯ブラシなどで汚れを落とすことはできますが、歯石になってしまうと歯ブラシの力では歯石は取り除けません。
なので歯石になる前に、歯垢の段階で予防することが最重要です。
歯石を放置で起こること4つ
(1)犬の歯石を放置すると、次第に歯ぐきの炎症が発症して『歯肉炎』になります。
歯と歯ぐきの間に隙間ができ、隙間に歯垢が溜まり、歯ぐきの付け根が次第に炎症で腫れて、ときに出血も伴います。
歯肉炎が進行してやがて『歯周病』に、歯周病までくると、歯と歯ぐきの隙間がさらに深くなり、歯を守り支える歯ぐきの中にある歯槽骨(しそうこつ)を破壊します。
ここまでなると、歯がグラグラする以外に、歯茎も膿むようになり、最終的に歯は抜け落ちていきます。
口から栄養を摂るためにも、歯と歯ぐきが病気になってしまっては、痛みでご飯が食べられなくなります。
(2)歯周病菌は血液の中に侵入して、全身を巡り広がっていき、体に重要な臓器に悪影響を及ぼします。
人では歯周病菌が明確に全身疾患に関わるとされていて、心筋梗塞や糖尿病などの影響があるように、犬にも肝臓や腎臓、肺、心臓の病気のリスクが高くなります。
歯周病が重症になると、頬に穴が開き中の歯が外から見える状態になり、皮膚を縫う事態になります!
歯周病菌が歯ぐきを溶かし、酷いと頬の肉をも溶かしてしまい穴が開きます。
「痛い」と痛みを訴えることのできないため、気づかないうちに歯周病が重症化していることもあります。
顔(口周り)に黒っぽいシミのようなものを見つけたら、もしかしたら、顔に穴が開く前兆かもしれません。
早急に動物病院へ受診してください。
(3)下アゴで歯石が溜まり放置することで、歯周病は進み、歯槽骨を徐々に溶かし始め、骨の厚みはなくなります。
外から衝撃が加わるだけで骨が折れてしまいます。
食事する様子がおかしい時には、歯周病からくる下アゴの骨折が起こっている可能性もあります。
(4)上アゴの歯ぐきの溝が深くなると、鼻の粘膜まで到達して、鼻の穴から口にかけてトンネルができてしまう病気を、口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)と言います。
くしゃみ・鼻水(膿を含んだ)が出るため、風邪と間違われるケースもあります。
歯周病で細菌が体内に入ると大変なことに!?
歯の汚れが気になっていても、ついケアを怠ると、分からないうちに全身の病気に繋がるのです。
歯周病の細菌が体内に入ると、とても怖いことが起こります。
歯ぐきの血管を通りながら「歯周病」は、血流にのって全身に行きわたりあらゆる病巣を作ります。
炎症している歯ぐきは血管自体がは弱く、ちょっとした拍子に細菌が侵入しやすい状態です。
眼窩下膿瘍(がんかかのうよう)
上アゴの奥歯で歯周病が進行すると、歯ぐきに膿がたまって、酷くなると膿が限界に達し皮膚を突き破り破裂します。
皮膚病と間違われやすいため、ぷっくり皮膚が膨らんできたら、奥歯が歯周病にかかっていないか確認してください。
糸球体腎炎や腎不全
血液をろ過する機能をもつ糸球体に歯周病菌が、炎症を引き起こす細胞を増やすと言われています。
糸球体とは・・・腎臓の中にある、ネフロンと呼ぶ場所にある毛細血管の集合体です。
糸球体腎炎は、急性(慢性)腎不全の症状や、原因となる別の病気によって症状の現れ方がさまざまです。
腎臓不全はウイルス性の疾患や原因が分からないことも多いのですが、歯周病の細菌が腎臓でトラブルを起こすこともあります。
心臓病
歯周病の細菌が引き起こす病気として、腎臓病が挙げられます。
歯周病でない犬と、重度の歯周病にかかっている犬と比べると、歯周病かかっている犬は心臓病が多いという結果も出ています。
場合によっては、心不全を起こしてしまう可能性もあります。歯周病の細菌が心臓に悪影響を与えているのです。
骨粗しょう症
歯周病から骨粗しょう症との繋がりは一見ないようで、深い関係があるのです。
歯周病にかかった歯ぐきから、骨密度を低下させる物質を出すため、骨がもろくなりやすくさせます。
糖尿病
血液に入り込んだ細菌を退治するために、体では色々な物質を出して攻撃します。しかし、菌を退治する物質はインスリンの働きを低下させます。
インスリンが上手く働かないため、血糖値が上がる状況が続いて、糖尿病が進行します。
歯周病の細菌は上記に述べた以外の臓器、どの部位でも病気を引き起こす可能はあります。
犬の歯石を除去する方法
歯石になると、歯ブラシ磨くだけでは除去ができません。だからといって、放っておくと口臭がきつくなるだけでなく、病気の原因になります。
歯石は石灰化した塊なので、簡単には取れません。
犬の歯石の除去は、「動物病院」「トリミングサロン」「自宅」の3つで行うことができます。
今回は、自宅でスケーラーを使っての歯石の除去をご紹介します。
※自宅で歯石を除去する場合、無理のない範囲で行いましょう。
※途中で嫌がったら中断してください、無理に続けると動いた時に歯ぐきを傷付ける恐れがあるからです。
【1】犬が驚かないように、口の外周りを触り慣れてきたら、歯ブラシ(歯みがきシート)で口の中に当てていきます。
【2】口の中への抵抗感がなくなったら、歯石除去の始めましょう。
【3】楽な姿勢をとり犬の頭が動かないようにしっかりと固定をします。
※1人では難しい場合、家族に協力してもらい2人で行う方が歯石除去がしやすくなります。
【4】歯ぐきがむき出しになるように、指で口を固定し開けたまま、利き手でスケーラーを歯にあてて滑らせる形で歯石を除去します。
※スケーラーは歯ぐきから下に向けて削ります。決して歯ぐきの方に向かって動かさないように気をつけましょう。
【5】こびりついていた全ての歯石の除去が終わったら、歯みがきシートかガーゼ(布)で歯石のカスを拭いたら、たくさんほめてあげてくださいね。
こちらは、歯石除去の動画です。道具を動かし方がわかりやすくのっています。
塊となった歯石を落とし、白い歯をよみがえらせるには道具が必要になります。
歯石の除去に便利なアイテム
『歯石の除去に便利なアイテム』をご紹介します。
アイテム① 歯石の除去の手順で登場した【スケーラー】
そぎ落としから、くぼみや細かい作業がしやすいです。
先端が尖っているため、扱う時は注意を払いながら使いましょう。
簡易スケーラーは(ドラッグストアなどで販売)、危険度がない代わりに、歯石の除去する能力は落ちます。
アイテム② 挟みながら歯石除去がはかどる【歯石取りペンチ】
歯石をペンチで挟み込みこんでから、落とすことで除去アイテムです。
先端が尖ったスケーラーを使うのは怖いという方におすすめです。
歯石が割れる際に聞こえる音がキライな子もいます。
アイテム③ シュッと吹きかける【歯石除去スプレー】
歯にシュッと1日1~2回吹きかけて、使い続けると塊の歯石を浮き上がらせるという歯石除去効果が発揮されるスプレーです。
吹きかけると奥歯の方まで成分が隅々まで届くため、誰でも簡単に使えるのがいいですよね。
番外編・・・スケーラーの代用品として、「飼い主さんの爪」です。
歯石の硬さによりますが、意外とポロリと取れることもあるようなので、歯磨き前や後に一度試してみるのもおすすめです。
爪を使えば、金属製の道具より安心できますね。
まとめ
健康的な生活を送ってもらうためにも、歯石のケアを定期的に行うことは欠かせません。
歯石になる前に、歯みがきで歯垢が付かないようにしてあげましょう。
歯みがきをせずにいると、人間と同じように「歯周病」になります。
歯石を除去する時は、安全を最優先して取りかかりましょう。
自宅では手に負えない歯石は、獣医師またはトリミングサロンへ相談してみてください。